ダイエットに挑戦した話し

自然ダイエットは苦い思い出

自然ダイエットとはつまり何もしなくても痩せる事ができるというお話であるが、私は不本意な形ではあるが、これを短期間で実現させた事がある。痩せることができたのにいったい何が不本意であったのか?

当時の事を振り返ってみたいと思う。

[始まりは太った事から]

私が20代後半の頃であった。まずは太りだした時の話になる。

元々は実家の親元から通勤していたのであるが、転勤があり、会社の寮で生活していた。

昼食は社員食堂で、そして夕食はその社員食堂から配達される弁当という食生活であった。

食堂や弁当のおかずは揚げ物類など油を使う料理が多く、また、残業で帰宅が深夜になる事も多々あり、食生活が不規則であったこと、さらにはストレス解消のためにビールを毎晩晩酌を続けていた事も良くなかった。

体重はみるみると増加していき、標準体重よりも5キロは太ってしまい、これはまずいかなとは思っていた!

[仕事のつまずきからの急転]

私は仕事の中であるプロジェクトの進行役を任されることになったのだが、仕切り役という立場は不慣れという事もあり、なかなか思うように仕事を進めることができなかった。

その進め方について先輩社員に叱責を受けたことをきっかけに、私は会社に出社しても仕事が手につかない状態に陥ってしまったのである。

毎日仕事はろくに進まず、鬱々した気持ちで帰宅すれば仕事の事が頭から離れず、だんだんと眠れない日々が続くようになっていった。

休日になればなったで、映画を観たり音楽を聴いたり、本を読んだりとそれまで楽しんで行っていた事すらその意欲が低下してしまい、それと同時に美味しいものを食べたいという食欲もすっかりとなくなってしまった。

当然のことながら、体重はみるみると減少していき、太り過ぎのピーク時と比べると10キロ体重が落ちてしまったのである。つまりは標準体重よりも更に5キロは減少したという事だ。

太り過ぎの体は一転して痩せ細った体に短期間で変わったわけであるが、痩せたからといってもダイエットに成功したと喜ぶような状況ではまったくなかったのである。

[復活への道]

心身共に疲弊した私はある休日明けの月曜日、仕事場に向かう気力がどうしても起きずに会社を休んでしまった。

会社に休む連絡した直後は今日は会社に行かなくてもいいんだという安堵感に包まれたものの、数時間後には明日から会社に行けるだろうかという心配事に変わっていく。

ゲームなどで気を紛らわせながらもとうとうこの日の朝も昼も食べ物を口にすることができなかった。

夕方になり、さすがに何も食べないのはまずいと、食堂で胃に流し込み易いお茶漬けを準備してなんとか掻き込んでいたところ、寮の隣の部屋に住み込んでいた他部署の後輩に出くわした。

話しやすい後輩だったということもあり、僕はこれまでの事、そして会社を休んでしまったという事まで洗いざらい話したのであった。自分が先輩でありながらというプライドもどうでもよかった。誰かに吐き出さなければ自分が壊れそうな思いであったのだ。

そうしたら彼も入社して間もない頃、同じように壁にぶつかり、1週間ほど会社に行けなくなった事があったという事を私に話してくれた。

社交的なこの人も同じような事があったのか、しかも1週間も休むとは。私はたかだか1日だけ休んだに過ぎないではないか。

なんとなく気が軽くなってきた私は翌日は出社してみようという気力がじわじわと沸いてきたのであった。本音をぶつけられる存在が身近にいた事に感謝しかなかった。

翌日は軽やかな気分で出社することができて、不思議な事にあんなに悩み苦しんでいた仕事も簡単に乗り越えられた気がした。

仕事の大きな壁は自分自身が創りだした幻影であった様だ。そこから私の食欲と体重が元に戻るのはそう遠いものではなかった。

[はじまりは生活習慣から]

さて、仕事のつまずきから始まった鬱状態からの激やせであったが、この災難が引き起こされた根底の原因は、生活習慣の乱れによるものであると今となっては思っている。

仕事の都合で帰宅が遅くなってしまう事についてはある程度はやむ得ないところだが、その様な場合は、カロリーを抑えた消化の良い質素な食事で済まし、できるだけ良い身体の状態で眠りに入るなど工夫できる事はあったのではないだろうか。

心の健康の基本は良質な食事と睡眠があってこそである。心の状態の不安定さを感じた場合はまずはその辺りを見直してみる事が重要ではないかと、苦い思い出を通して考えたお話である。

 

s_hirama1著