私たちがダイエットをしたいと思うのはなぜだろうか?動機はさまざまな事があるだろう。
健康診断でメタボ体型であると指摘された、あるいは肥満は成人病の要因となり得るので予防のために痩せておきたいなど健康上の理由でダイエットに取り組むということは大いにあるだろう。だがこれらの理由からダイエットを始めるのは主には中高年の世代の方が多いのではないだろうか。
だが、どちらかといえばダイエットという言葉に敏感なのはむしろ若い世代の様に思える。さて、そんな若者たちはどのような動機からダイエットを始めるのであろうか?
ある1人の青年にスポットを当ててみよう。
[28歳、剛の憂鬱]
僕の名前は剛。28歳の会社員である。大学を卒業後に今の会社に入社して5年になったところだ。
高校時代は甲子園を目指していた高校球児であり、引き締まった体型で体重は70キロ台を維持していた。
しかしながら今はどうかというと、90キロの大台に迫る勢いで体重が増え続けている。
なぜこうなってしまったのかというと、不規則な食生活が思い当たる。
残業が多く、夕食はコンビニ弁当などを寝る直前の深夜23時頃に胃に流し込む毎日。そしてたまに帰りが早い日があれば、会社の同僚と居酒屋に繰り出し、揚げ物などをツマミにビールを何杯も飲み、締めにラーメンまで食べてしまう始末である。
高校球児の時はサードを守っていたレギュラー選手であったのだが、その面影は既に残っておらず、その時の話をすれば「ポジションはキャッチャーだったでしょ?」と先輩にからかわれるのである。キャッチャーが太っているというのはそう、ドカベンのイメージから来ているのだが、その通りの体型であったため、そう言われても仕方がない。
そして僕には彼女がいない。いないというか、ずっとできないままである。僕がモテないのは太っているからに違いない。なにが問題かってこれがいちばんの問題だ。痩せることができたならば世界は変わるはずだ。よし、痩せてやろう。明日からダイエットだ。そうだな、、明日から夕食は抜きにしよう。痩せることさえできれば僕はモテるのだ。そうだ、1日でも早く痩せなければ。よし、1ヶ月で高校時代の体重に戻してやろう。。
若い世代がダイエットを始める動機というのはこの様に異性の関心を惹くために容姿を整えようと考える事が多いのではないだろうか。
体を引き締める動機として異性の目を意識するという事自体はまったく悪い事ではないが、剛のように明日から食事を抜こう、すぐにでも痩せようと短期間で急激な結果を求めるのは危険である。
ダイエットはお金の投資に似ている。お金の投資を最終的に成功させるためには、少額の資金でコツコツと堅実に稼いでいくローリスクローリターンが基本。ダイエットに置き換えるならば、適度な食事や運動、および規則正しい生活習慣をコツコツ積み重ねていく事が、多少時間をかけてでも実現するいちばんの近道である。短期的に大きなリターンを求める事はそれだけリスクが伴うものだ。剛のように過度な食事制限をすれば、一時的には減量に成功できるかもしれないが、結果が出て安心したところで食事制限をやめたら、リバウンドしてしまう可能性が高く、更にはカロリーが燃焼しづらくなる体質になるリスクも大きい。
[痩せればモテるは思い込み]
テレビやファッション誌に登場するモデルなどの影響なのか、私たちは痩せればモテるという幻想に縛られているのではないだろうか。
体系の好みは人それぞれであるので、痩せているから良いという志向は偏った考えと云えるかもしれない。
剛のように、肥満体を改善しようとダイエットを思い立つ事はまだ理解のできる話ではあるが、まったく太りぎみの体型でもない人がやたらと体型を気にして過剰なダイエットに取り組む姿を幾度となく目にする。これは女性に多く見受けられる傾向であるが、これも痩せれば注目されるという思い込みと云わざる得ないのではなかろうか。
[健康のためのダイエットが原点だ]
本来のダイエットの目的は健康な身体の維持という事が重要だ。
適度な食事と運動および充分な睡眠と規則正しい生活習慣が心身の健康を保ち、おまけに外見的にもより若く美しい状態を作る有効な手助けとなるであろう。
外見に対する偏った思い込みで、極端な方法でのダイエットの実行で逆に健康を損ねる結果を招いたり、理想とかけ離れた結果にしかならないとなれば本末転倒である。
私たちがダイエットを思い立ったその時は、いちどは立ち止まって、その目的や方法をあらためて考えてみる必要があるだろう。
s_hirama1著